深発地震面とは?斜めに並ぶ深い地震と、沈み込むプレートの3D断面

公開 2026年10月10日 ・ 最終確認 2026年10月10日 ・ 運営:Sumika EdTech

30秒でわかる

  1. 地震のほとんどは深さ約100kmより浅いところで起きますが、日本周辺では、沈み込むプレートの中で深さ700km近くまで地震が起きています[1]。震源の深さで呼び分けることが多く、日本では60km(資料によっては70km)と300kmが境の目安です[4][5]。
  2. 深い地震は、海溝から陸の側(東北では日本海側)へだんだん深くなる、斜めの面にそって並んでいます。沈み込んだ海のプレート(日本の下では主に太平洋プレート)の中で起きているためで、この面を「深発地震面」(和達-ベニオフ帯)と呼びます[9][13][12]。
  3. 震源がとても深い地震では、真上ではあまり揺れないのに、離れた場所で揺れることがあります。これを「異常震域」と呼びます[29][31]。
  4. 深発地震面は、中央気象台(今の気象庁)の和達清夫が、1920〜30年代の研究で明らかにしました。東北の下では、地震の面が2枚重なる「二重深発地震面」も見つかっています[7][8][14]。

深発地震は深さ何kmから?

地震は、震源の深さで分けて呼ぶことがあります。ただし決まった1つの定義はなく、境の数字は資料によって少しずつ違います[4][5]。

この記事では、70km前後より深い地震をまとめて「深い地震」と呼びます。なお「深発地震面」という名前には「深発」とついていますが、この面には深さ300kmより浅い「やや深発地震」もふくまれます[13][17]。

3D地図では、地震を球で表し、球の色で震源の深さを示しています。深さ0kmは赤、30kmはオレンジ、70kmは黄、150kmは緑、300kmは青、500kmより深いと紫です(地図の画面下にある色の帯と同じです)。

地震はどこまで深く起きるのか

地震は、地表からおよそ深さ700kmまでの範囲で起きます[1][3]。そのほとんどは、深さ約100kmより浅いところです[1]。

地球の中は、外側から「地殻」「マントル」「核」という層に分かれています。マントルは、地殻の下、深さ約2,900kmまで続く岩石の層です[1][23]。70kmより深い地震は、主に、このマントルの中へ沈み込んでいく海のプレートの中で起きています[3][1]。マントルの中へ沈み込んだプレートの部分は「スラブ」とも呼ばれます[3]。

気象庁が観測した日本でいちばん深い地震は、2015年5月30日21時46分に小笠原諸島西方沖で起きたマグニチュード3.6の地震で、深さは698kmでした[1][6]。世界に目を広げると、USGSの記録では、南太平洋のフィジー付近で深さ700kmを超える地震が起きています[6]。

深い地震の数を世界全体で深さごとに数えると、深さ300〜450km付近でいちばん少なくなり、そこから再び増えて、約600kmで山になります[22][13]。そして約700kmより深いところでは、ほとんど起きません[1][13]。深さ約700kmは、マントルの上の部分(上部マントル)と下の部分(下部マントル)の境目(深さ約660km)の近くです[1][36]。理由ははっきりしていませんが、マントルの鉱物が高い圧力で別の結晶の形に変わることと関係していると考えられています仮説[1][36][38]。気象庁は、下部マントルでは主な鉱物であるかんらん石の結晶の形が変わり、岩石が粘り強く変形する性質を持つため、地震が起きないのではないかと説明しています[1]。

なお、同じ地震でも、震源の深さの値は観測した機関によって違い、深い地震では数十km違うこともあります。たとえば2023年6月28日の日本海北部の地震は、気象庁が深さ518km[25]、USGSが442km[33]としています。

深発地震面(和達-ベニオフ帯)とは

深発地震面(しんぱつじしんめん)は、深い地震が、海溝から陸の側へだんだん深くなる斜めの面にそって並んだものです[9][13]。研究した2人の名をとって「和達-ベニオフ帯」、または単に「ベニオフ帯」とも呼ばれます[12][8]。日本付近では、日本海の下や小笠原諸島の西の海の下で、深さ数百kmの地震が起きています[1][25]。

だれが見つけたのか

1927年、中央気象台の和達清夫は、日本の観測網のデータから、深さ数百kmという深い場所で起きる地震があることを示しました[7][8]。和達は、ほぼ同じ場所で起きた浅い地震と深い地震で、各地にP波とS波が届く時刻の差(初期微動継続時間)を比べました。すると、震央(震源の真上にあたる地表の地点)の近くでも、浅い地震ではこの差が10秒未満だったのに、深い地震では40秒を超えていました[7][8]。

和達は1935年の論文で、同じ深さの震源を線で結んだ図(地図の等高線のような図)を描きました。そして、深い地震が太平洋側の海溝から日本海・大陸側へ向かってだんだん深くなる、傾いた面にそって起きていることを示しました[8][5]。

アメリカのカリフォルニア工科大学のヒューゴ・ベニオフも、1949年と1954年の論文で世界の各地を調べ、海の側から大陸の下へ傾いて深さ数百kmまで続く地震の帯をまとめました。ただしベニオフは、この帯を沈み込むプレートではなく、海と大陸の境にある巨大な断層だと考えていました[10][11]。

東北地方の下に沈み込む太平洋プレートと深発地震面の模式図 東西方向の断面。右の日本海溝から太平洋プレートが左(日本海側)へ斜めに沈み込み、深い地震の点がプレートにそって深さ500km余りまで並ぶ。深さ60〜70kmより深いところでは、プレートの中で点の列が上下2本に分かれ(二重深発地震面)、深さ150kmあたりから近づいて、180km前後で合わさる。日本列島の下の浅いところにも地震の点がある。 0km100km200km300km400km500km600km 日本列島 日本海 太平洋 日本海溝 太平洋プレート 深発地震面 (和達-ベニオフ帯) 二重深発地震面 間隔 約30〜40km 模式図(横方向は実際より縮めて描いています)
図:東北地方の下の断面の模式図。点は地震、色は深さ(地図の色と同じ)。太平洋プレートは日本海溝から沈み込み、深い地震はその中に並びます。この断面では、地震は深さ500km余りまで続きます。深さ700km近くの地震は、小笠原諸島の西の海の下で起きています[1]。

なぜ斜めに並ぶのか

深い地震が斜めの面に並ぶのは、沈み込んだ海のプレートの中で起きるためです。震源の並びが、沈み込むプレートの形をなぞっているのです[13][1]。沈み込むプレートは、周りのマントルより温度が低く、硬い岩の板です[13][35][20]。

このサイトの3D地図に出てくる半透明の面は、沈み込むプレートの上の面です。USGSがまとめたプレートの形のデータ(Slab2)をもとに描いています[34]。深い地震が起きたら、震源の球とこの面の位置を見比べてみてください。ただし、震源の深さは機関によって数十km違うことがあり、小笠原諸島の西の深さ600kmを超える地震のように、面から離れて見えるものもあります。

この断面を3D地図で見る(東北・北緯38.3度)

二重深発地震面とは:東北の下で2枚に分かれる地震の面

東北日本の下では、深さおよそ200kmまでの範囲で、深い地震の面が上下2枚に分かれています[15][17]。東北大学の海野徳仁さんと長谷川昭さんが1975年に「深発地震面の二層構造」として報告し、1978年には長谷川さん・海野さん・高木章雄さんが国際誌で詳しく発表しました[14][15]。

二重深発地震面は東北だけのものではありません。2007年の研究では、調べた世界の16の沈み込み帯(プレートが沈み込んでいる場所)すべてで見つかりました。また、上下の面の間隔は、沈み込むプレートが古い(できてから長い時間がたっている)ほど大きいことも示されました[18][16]。

深い地震はなぜ起きるのか(研究が続いています)

深い地震が起きる理由として、いくつかの説が研究されています。

日本の下に沈み込む2つのプレート

日本の下には、2つの海のプレートが沈み込んでいます。どちらの中でも地震が起きますが、地震が起きる深さは大きく違います。

太平洋プレート

フィリピン海プレート

異常震域とは:震源の真上より遠くで揺れるのはなぜ?

震源がとても深い地震では、震源の真上ではほとんど揺れないのに、離れた場所で揺れを感じることがあります。気象庁はこれを「異常震域(いじょうしんいき)」と呼んでいます[29][30]。「異常」は揺れ方の分布につけられた名前で、地震そのものが異常という意味ではありません[31]。

理由は、沈み込んだ海のプレートが地震波をあまり弱めずに遠くまで伝える一方、プレートの上のマントルを通って真上へ向かう揺れは弱まりやすいためです[29][31][32][30]。このため、日本海の下の深い地震で、震源に近い日本海側より、遠い太平洋側で揺れが観測されることがあります[32][30]。たとえば2023年6月28日の日本海北部の地震(気象庁の値で深さ518km、マグニチュード6.3)は太平洋プレートの内部で起き、震央から離れた北海道や東北地方の太平洋側などで震度3〜1が観測されました[25]。

また気象庁は、深発地震(深さ100km程度より深い地震)では、震源とマグニチュードから震度を予測する従来の方法では、緊急地震速報で震度を正確に推定するのが難しいと説明しています[2]。

3D地図で深い地震を選ぶと、震度が観測された都道府県が、その震度の色で塗られます。震央に近い地域より、離れた太平洋側の地域のほうが強い震度の色で塗られていたら、異常震域が現れている可能性があります(くわしくは気象庁の発表で確かめてください)。上の2023年の地震は、3D地図で開いて確かめられます。3D地図では、発表された当時の値(深さ480km、マグニチュード6.2)で表示されます。地図では、都道府県の中でいちばん強い震度の色で県全体が塗られるため、北海道は太平洋側の浦幌町で観測された震度3の色になります。東北地方を見ると、日本海側の秋田県には色がつかず、太平洋側の岩手県・宮城県が震度2の色で塗られています[39]。また、この地震の球は半透明の面より100kmほど下に表示されます。面はプレートの上の面だけを描いたもので、震源の深さの値も機関によって違うためです。

3D地図で見てみよう

3D地図に出る地震の球は、ふだんは過去24時間に震度1以上を観測した地震だけです(記事のリンクから開いた地震を除きます)。そのため断面図を開いても、深い地震の球が1つもないことがよくあります。そのときは、半透明の帯(沈み込むプレートの上の面)の形を見てください。

断面図は、選んだ緯度で日本を東西にまっすぐ切り、南北の厚さ110kmぶんだけを残して、南から真横に見た図です。右が東(太平洋側)、左が西(日本海側)で、上の図と同じ向きです。深さと横の長さはほぼ同じ縮尺です(陸の山の高さだけは、見やすいように高くしています)。画面の「断面の位置」のつまみで、切る場所を南北に動かせます。

出典

本文の事実は、運営側で2つ以上の独立した資料と照らし合わせています。ここには主な出典を載せています。深さやマグニチュードの値は、観測した機関によって違うことがあります。

  1. 気象庁「地震・津波・火山を知る 1. 地球と大地の動き」
  2. 気象庁「緊急地震速報の特性や限界、利用上の注意」
  3. USGS(米国地質調査所)「Determining the Depth of an Earthquake」
  4. 気象庁「地震・火山月報(防災編)平成14年3月」
  5. 平凡社『最新 地学事典』『世界大百科事典』(コトバンク)「深発地震」
  6. 気象庁「地震について(よくある質問集)」
  7. 和達清夫(日本気象学会『気象集誌』第2輯 5巻6号, 1927)「深層地震の存在と其の研究」
  8. Frohlich, C.(Journal of Geophysical Research 92(B13), 1987)「Kiyoo Wadati and Early Research on Deep Focus Earthquakes」
  9. 地震調査研究推進本部「地震がわかる!防災担当者参考資料 資料編 索引「海溝」」
  10. Benioff, H.(GSA Bulletin 60(12), 1949)「Seismic evidence for the fault origin of oceanic deeps」
  11. Benioff, H.(GSA Bulletin 65(5), 1954)「Orogenesis and deep crustal structure — additional evidence from seismology」
  12. USGS(米国地質調査所)「Earthquake Hazards Program Glossary(Benioff zone)」
  13. 日本地震学会『なゐふる』第105号(2016年)「小笠原巨大深発地震の謎」
  14. 海野徳仁・長谷川昭(日本地震学会『地震』第2輯 28巻2号, 1975)「東北日本にみられる深発地震面の二層構造について」
  15. Hasegawa, A., Umino, N., Takagi, A.(Geophysical Journal of the Royal Astronomical Society 54, 1978)「Double-planed deep seismic zone and upper-mantle structure in the Northeastern Japan Arc」
  16. 長谷川昭ほか(東京地学協会『地学雑誌』121(1), 2012)「沈み込み帯の地震の発生機構」
  17. Kawakatsu, H.(Journal of Geophysical Research 91(B5), 1986)「Double seismic zones: kinematics」
  18. Brudzinski, M. R. ほか(Science 316, 2007)「Global prevalence of double Benioff zones」
  19. Hacker, B. R. ほか(Journal of Geophysical Research 108(B1), 2003)「Subduction factory 2. Are intermediate-depth earthquakes in subducting slabs linked to metamorphic dehydration reactions?」
  20. 東北大学 大学院理学研究科 地球物理学専攻「プレート沈み込み帯ではなぜ地震活動が活発なのか?」
  21. Zhan, Z.(Annual Review of Earth and Planetary Sciences 48, 2020)「Mechanisms and Implications of Deep Earthquakes」
  22. Ohuchi, T. ほか(Nature Communications, 2022)「In situ X-ray and acoustic observations of deep seismic faulting upon phase transitions in olivine」
  23. 地震調査研究推進本部「地震がわかる!防災担当者参考資料 解説編 第1部 地震の仕組みと現象」
  24. 海洋研究開発機構(JAMSTEC)「プレスリリース別紙(2006年6月15日)」
  25. 気象庁「2023年6月の地震活動(その他の地域)「6月28日 日本海北部の地震」」
  26. 海上保安庁 海洋情報部「南海トラフにおける海底地殻変動と重心推定法による結果の検証(2011年)」
  27. 地震調査研究推進本部「日本の地震活動 九州・沖縄地方」
  28. 地震調査研究推進本部「日本の地震活動 近畿地方」
  29. 気象庁「2024年8月の地震活動(北海道地方)参考資料「震央付近の場所よりも震央から離れた場所で大きな震度を観測する地震について」」
  30. 地震調査研究推進本部 地震調査委員会「全国を概観した地震動予測地図 2007年版 用語集「異常震域」」
  31. 気象庁 稚内地方気象台「防災メモ 〜異常震域〜」
  32. 防災科学技術研究所(Hi-net)「紀伊半島南東沖の深発地震による「異常震域」波動伝播アニメーション」
  33. USGS(米国地質調査所)「M 5.8 - Primor'ye, Russia(2023年6月27日 23:38 UTC)」
  34. Hayes, G.(U.S. Geological Survey data release, 2018)「Slab2 - A Comprehensive Subduction Zone Geometry Model」
  35. 海洋研究開発機構(JAMSTEC)「上部マントルの底付近で横たわるスラブが下部マントルへ突き抜ける前兆―2015年5月30日小笠原諸島西方沖深発地震が示唆すること―」
  36. バイロイト大学・高輝度光科学研究センター・岡山大学ほか(2019年10月4日 発表)「SPring-8 で地球マントル主要鉱物の高圧相転移を超高精度で決定 ~地球マントル 660 km 不連続の成因を解明~」
  37. 地震調査研究推進本部「用語解説(プレートテクトニクスほか)」
  38. Kirby, S. H., Stein, S., Okal, E. A., Rubie, D. C.(Reviews of Geophysics 34(2), 1996)「Metastable mantle phase transformations and deep earthquakes in subducting oceanic lithosphere」
  39. P2P地震情報「地震情報 API(2023年6月28日の地震の各地の震度、発表当時の情報)」

訂正・更新の記録

2026年10月10日 公開。

この記事をXで共有 ・ 「地震のしくみ」の記事一覧へ ・ このサイトについて