深発地震面とは?斜めに並ぶ深い地震と、沈み込むプレートの3D断面
30秒でわかる
- 地震のほとんどは深さ約100kmより浅いところで起きますが、日本周辺では、沈み込むプレートの中で深さ700km近くまで地震が起きています[1]。震源の深さで呼び分けることが多く、日本では60km(資料によっては70km)と300kmが境の目安です[4][5]。
- 深い地震は、海溝から陸の側(東北では日本海側)へだんだん深くなる、斜めの面にそって並んでいます。沈み込んだ海のプレート(日本の下では主に太平洋プレート)の中で起きているためで、この面を「深発地震面」(和達-ベニオフ帯)と呼びます[9][13][12]。
- 震源がとても深い地震では、真上ではあまり揺れないのに、離れた場所で揺れることがあります。これを「異常震域」と呼びます[29][31]。
- 深発地震面は、中央気象台(今の気象庁)の和達清夫が、1920〜30年代の研究で明らかにしました。東北の下では、地震の面が2枚重なる「二重深発地震面」も見つかっています[7][8][14]。
深発地震は深さ何kmから?
地震は、震源の深さで分けて呼ぶことがあります。ただし決まった1つの定義はなく、境の数字は資料によって少しずつ違います[4][5]。
- 日本でよく使う分け方:深さ60km(資料によっては70km)までが「浅発地震」、300kmまでが「やや深発地震(稍深発地震)」、それより深いと「深発地震」[4][5]
- 米国地質調査所(USGS):0〜70kmが浅い地震、70〜300kmが中間の深さの地震、300〜700kmが深い地震[3]
- 気象庁(緊急地震速報の説明):深さ100km程度より深い場所で発生する地震を「深発地震」[2]
この記事では、70km前後より深い地震をまとめて「深い地震」と呼びます。なお「深発地震面」という名前には「深発」とついていますが、この面には深さ300kmより浅い「やや深発地震」もふくまれます[13][17]。
3D地図では、地震を球で表し、球の色で震源の深さを示しています。深さ0kmは赤、30kmはオレンジ、70kmは黄、150kmは緑、300kmは青、500kmより深いと紫です(地図の画面下にある色の帯と同じです)。
地震はどこまで深く起きるのか
地震は、地表からおよそ深さ700kmまでの範囲で起きます[1][3]。そのほとんどは、深さ約100kmより浅いところです[1]。
地球の中は、外側から「地殻」「マントル」「核」という層に分かれています。マントルは、地殻の下、深さ約2,900kmまで続く岩石の層です[1][23]。70kmより深い地震は、主に、このマントルの中へ沈み込んでいく海のプレートの中で起きています[3][1]。マントルの中へ沈み込んだプレートの部分は「スラブ」とも呼ばれます[3]。
気象庁が観測した日本でいちばん深い地震は、2015年5月30日21時46分に小笠原諸島西方沖で起きたマグニチュード3.6の地震で、深さは698kmでした[1][6]。世界に目を広げると、USGSの記録では、南太平洋のフィジー付近で深さ700kmを超える地震が起きています[6]。
深い地震の数を世界全体で深さごとに数えると、深さ300〜450km付近でいちばん少なくなり、そこから再び増えて、約600kmで山になります[22][13]。そして約700kmより深いところでは、ほとんど起きません[1][13]。深さ約700kmは、マントルの上の部分(上部マントル)と下の部分(下部マントル)の境目(深さ約660km)の近くです[1][36]。理由ははっきりしていませんが、マントルの鉱物が高い圧力で別の結晶の形に変わることと関係していると考えられています仮説[1][36][38]。気象庁は、下部マントルでは主な鉱物であるかんらん石の結晶の形が変わり、岩石が粘り強く変形する性質を持つため、地震が起きないのではないかと説明しています[1]。
なお、同じ地震でも、震源の深さの値は観測した機関によって違い、深い地震では数十km違うこともあります。たとえば2023年6月28日の日本海北部の地震は、気象庁が深さ518km[25]、USGSが442km[33]としています。
深発地震面(和達-ベニオフ帯)とは
深発地震面(しんぱつじしんめん)は、深い地震が、海溝から陸の側へだんだん深くなる斜めの面にそって並んだものです[9][13]。研究した2人の名をとって「和達-ベニオフ帯」、または単に「ベニオフ帯」とも呼ばれます[12][8]。日本付近では、日本海の下や小笠原諸島の西の海の下で、深さ数百kmの地震が起きています[1][25]。
だれが見つけたのか
1927年、中央気象台の和達清夫は、日本の観測網のデータから、深さ数百kmという深い場所で起きる地震があることを示しました[7][8]。和達は、ほぼ同じ場所で起きた浅い地震と深い地震で、各地にP波とS波が届く時刻の差(初期微動継続時間)を比べました。すると、震央(震源の真上にあたる地表の地点)の近くでも、浅い地震ではこの差が10秒未満だったのに、深い地震では40秒を超えていました[7][8]。
和達は1935年の論文で、同じ深さの震源を線で結んだ図(地図の等高線のような図)を描きました。そして、深い地震が太平洋側の海溝から日本海・大陸側へ向かってだんだん深くなる、傾いた面にそって起きていることを示しました[8][5]。
アメリカのカリフォルニア工科大学のヒューゴ・ベニオフも、1949年と1954年の論文で世界の各地を調べ、海の側から大陸の下へ傾いて深さ数百kmまで続く地震の帯をまとめました。ただしベニオフは、この帯を沈み込むプレートではなく、海と大陸の境にある巨大な断層だと考えていました[10][11]。
なぜ斜めに並ぶのか
深い地震が斜めの面に並ぶのは、沈み込んだ海のプレートの中で起きるためです。震源の並びが、沈み込むプレートの形をなぞっているのです[13][1]。沈み込むプレートは、周りのマントルより温度が低く、硬い岩の板です[13][35][20]。
このサイトの3D地図に出てくる半透明の面は、沈み込むプレートの上の面です。USGSがまとめたプレートの形のデータ(Slab2)をもとに描いています[34]。深い地震が起きたら、震源の球とこの面の位置を見比べてみてください。ただし、震源の深さは機関によって数十km違うことがあり、小笠原諸島の西の深さ600kmを超える地震のように、面から離れて見えるものもあります。
二重深発地震面とは:東北の下で2枚に分かれる地震の面
東北日本の下では、深さおよそ200kmまでの範囲で、深い地震の面が上下2枚に分かれています[15][17]。東北大学の海野徳仁さんと長谷川昭さんが1975年に「深発地震面の二層構造」として報告し、1978年には長谷川さん・海野さん・高木章雄さんが国際誌で詳しく発表しました[14][15]。
- 深さ150kmあたりまでは、上の面と下の面はほぼ平行で、間隔は約30〜40kmです。それより深くなると2つの面は近づき、深さ180km前後で合わさります[15][17]。
- 下の面の地震は、およそ深さ60〜70kmより深いところから現れます[17][16]。
- 東北の下では、上の面ではプレートが沈み込む向きに押し縮められるタイプ、下の面では引き伸ばされるタイプの地震が多く見られます[17][14]。
二重深発地震面は東北だけのものではありません。2007年の研究では、調べた世界の16の沈み込み帯(プレートが沈み込んでいる場所)すべてで見つかりました。また、上下の面の間隔は、沈み込むプレートが古い(できてから長い時間がたっている)ほど大きいことも示されました[18][16]。
深い地震はなぜ起きるのか(研究が続いています)
深い地震が起きる理由として、いくつかの説が研究されています。
- 深さ約60〜300km:沈み込むプレートの岩石には、水をふくむ鉱物(含水鉱物)があります。プレートが深く沈んで温度や圧力が上がると、この鉱物から水が出てきます。その水が岩石を壊れやすくする、という「脱水脆性化(だっすいぜいせいか)」説が有力とされています有力な説。地震の起きる場所と水が出ると予想される場所が一致することなどにもとづく説で、地下で直接確かめられたものではありません[19][20]。二重深発地震面の下の面については、水がかかわっているかどうかも含めて議論が続いています[16]。
- 深さ300kmより深いところ:まだ決着していません仮説。有力な候補の一つは、次のような考え方です。マントルに多い鉱物「かんらん石」は、高い圧力のもとでは別の鉱物に変わります。ところが冷たいプレートの中では、変わりきれずに残ることがあります。この残ったかんらん石が、深いところで急に別の鉱物へ変わるときに、断層ができるというものです。ほかの説も検討されています[21][22]。
日本の下に沈み込む2つのプレート
日本の下には、2つの海のプレートが沈み込んでいます。どちらの中でも地震が起きますが、地震が起きる深さは大きく違います。
太平洋プレート
- 沈み込む場所:千島海溝・日本海溝。さらに南の伊豆・小笠原海溝では、フィリピン海プレートの下に沈み込みます[1][37]。
- 動き:ほぼ東南東の方から、年に約8cmの速さで近づいています(千島海溝・日本海溝付近)[37][24]。
- 地震が起きる深さ:日本海の下の、深さ500kmを超える場所でも地震が起きています[25]。
フィリピン海プレート
- 沈み込む場所:相模トラフ・駿河トラフ・南海トラフ・南西諸島海溝[1][37]。
- 動き:ほぼ南東の方から、年に数cmの速さで近づいています。速さは場所や見積もり方で違います[27][26]。
- 地震が起きる深さ:太平洋プレートほど深くありません。近畿地方中部で深さ70〜80km、九州の豊後水道付近〜宮崎県中部で約150km、トカラ列島付近で約250kmまで。沖縄地方では250kmより深いところでも起きています[27][28]。
異常震域とは:震源の真上より遠くで揺れるのはなぜ?
震源がとても深い地震では、震源の真上ではほとんど揺れないのに、離れた場所で揺れを感じることがあります。気象庁はこれを「異常震域(いじょうしんいき)」と呼んでいます[29][30]。「異常」は揺れ方の分布につけられた名前で、地震そのものが異常という意味ではありません[31]。
理由は、沈み込んだ海のプレートが地震波をあまり弱めずに遠くまで伝える一方、プレートの上のマントルを通って真上へ向かう揺れは弱まりやすいためです[29][31][32][30]。このため、日本海の下の深い地震で、震源に近い日本海側より、遠い太平洋側で揺れが観測されることがあります[32][30]。たとえば2023年6月28日の日本海北部の地震(気象庁の値で深さ518km、マグニチュード6.3)は太平洋プレートの内部で起き、震央から離れた北海道や東北地方の太平洋側などで震度3〜1が観測されました[25]。
また気象庁は、深発地震(深さ100km程度より深い地震)では、震源とマグニチュードから震度を予測する従来の方法では、緊急地震速報で震度を正確に推定するのが難しいと説明しています[2]。
3D地図で深い地震を選ぶと、震度が観測された都道府県が、その震度の色で塗られます。震央に近い地域より、離れた太平洋側の地域のほうが強い震度の色で塗られていたら、異常震域が現れている可能性があります(くわしくは気象庁の発表で確かめてください)。上の2023年の地震は、3D地図で開いて確かめられます。3D地図では、発表された当時の値(深さ480km、マグニチュード6.2)で表示されます。地図では、都道府県の中でいちばん強い震度の色で県全体が塗られるため、北海道は太平洋側の浦幌町で観測された震度3の色になります。東北地方を見ると、日本海側の秋田県には色がつかず、太平洋側の岩手県・宮城県が震度2の色で塗られています[39]。また、この地震の球は半透明の面より100kmほど下に表示されます。面はプレートの上の面だけを描いたもので、震源の深さの値も機関によって違うためです。
3D地図で見てみよう
3D地図に出る地震の球は、ふだんは過去24時間に震度1以上を観測した地震だけです(記事のリンクから開いた地震を除きます)。そのため断面図を開いても、深い地震の球が1つもないことがよくあります。そのときは、半透明の帯(沈み込むプレートの上の面)の形を見てください。
断面図は、選んだ緯度で日本を東西にまっすぐ切り、南北の厚さ110kmぶんだけを残して、南から真横に見た図です。右が東(太平洋側)、左が西(日本海側)で、上の図と同じ向きです。深さと横の長さはほぼ同じ縮尺です(陸の山の高さだけは、見やすいように高くしています)。画面の「断面の位置」のつまみで、切る場所を南北に動かせます。
- 東北地方の下を見る(北緯38.3度)太平洋プレートが日本海の下へ沈み込む形
- 北海道の下を見る(北緯43度)千島海溝から沈み込む太平洋プレート
- 九州の下を見る(北緯32度)南東の海溝から沈み込み、九州の下で西へ深くなるフィリピン海プレート(この緯度では地震は深さ約150kmまで)と、東の太平洋プレートを見比べる
- 全体の3D地図を開く過去24時間の地震。黄・緑・青・紫の球が、深さ70kmより深い地震です
出典
本文の事実は、運営側で2つ以上の独立した資料と照らし合わせています。ここには主な出典を載せています。深さやマグニチュードの値は、観測した機関によって違うことがあります。
- 気象庁「地震・津波・火山を知る 1. 地球と大地の動き」
- 気象庁「緊急地震速報の特性や限界、利用上の注意」
- USGS(米国地質調査所)「Determining the Depth of an Earthquake」
- 気象庁「地震・火山月報(防災編)平成14年3月」
- 平凡社『最新 地学事典』『世界大百科事典』(コトバンク)「深発地震」
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訂正・更新の記録
2026年10月10日 公開。